12月のベロニカ/貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫

12月のベロニカ (富士見ファンタジア文庫)
第14回ファンタジア長編小説大賞「大賞」受賞作。滅多に「大賞」を出さないことで有名な新人賞、今回で3人目の受賞。諸事情もあって大賞受賞者がなかなか本を出してくれないといジンクスも噂されていますが、この人はどうなることやら。
読み終えてみて思ったのは、大賞は基本的に奇を衒わない王道じゃなければ取れないのだな、ということ。最近色々試行錯誤している富士見の中では逆に浮いてます。だが、それがいい。ただ王道というだけでなく、意図的に、でも気付かれないようにミスリードを誘う構成にも感心しました。でも、どうせなら最後の最後まで隠し通してた方がもっと驚いたような気もするけど。中盤でバラされて、やや中途半端だったか?情景描写に乏しいのも気になりましたが、そこはまあ読みやすさを追求したということで。
欠点といえば、2人いる主人公の内、片方に偏りすぎたということでしょうか。キャラの葛藤とか全然足りない。おかげでそっちの方にはあんまり共感できず。多分偏った方こそ作者の書きたかった方ではあるんだろうけど……それもこれもミスリードをわざと誘う構成のため、と言えば納得できないでもないけど。似ているからって描写しなくてもいい、ということはないだろうに。あと、もうちょっと巫女まわりの設定とかも話に絡ませてほしかった。