バッカーノ! The Rolling Bootlegs/成田良悟/電撃文庫

バッカーノ!―The Rolling Bootlegs (電撃文庫)


悪魔のミカタうえお久光と並んで電撃新人の中で2ch評価が非常に高い人。


まず、禁酒法時代のニューヨークってことであざの耕平のデビュー作「ブートレガース 神仙酒コンチェルト」を思い出しました。あっちはこれより更にコメディ色が強いので比較してもしょうがないけど。アクが強いって意味ではDクラやBBBより遥かに上の作品でした。あっちも人気再沸騰しないかなあ……


さて、「バッカーノ!」。タイトルにもある通り、たくさんの登場人物が縦横無尽に馬鹿騒ぎを繰り広げる話でした。(一応)主人公と思っていたフィーロすらほとんど最後まで事情を知らず、セラードとエニス以外の登場人物全員が各々の事情で各々関係ないところで動いていたのが、偶然を通じていつの間にか巻き込まれ、最後には収束していくという構成は新鮮。「東京ゴッドファーザーズ」を連想しましたが、あっちはホームレス3人という軸は一応あったしなあ。本当にギリギリ最後まで状況を交錯させない姿勢は敬服します。


群像劇ゆえか魅力を感じる暇もなかったキャラクターの中では唯一、ミリアとアイザックの泥棒コンビは好き。偶然に次ぐ偶然が話を作っていく構造で、その偶然を実現するための狂言回し。この2人だけで1本話を作ってほしいところですが、そうすると話が成り立たなくなりそうなのを考えると、時々現れては状況を引っかき回して去っていくという今の位置付づけが丁度いいんでしょう。


個人的に評価を落としたのは終盤。なんだかセラードが急に3流悪役のような言動をし始め、展開もなんだか陳腐に……作者自身あと書きで「勢いに任せて書いた」と言ってるんですが、それまでノリにノって書いてたのが、最後の最後で息が切れたような印象を受けました。主人公自身とその仲間が最後に不老不死になって、しかもそれを許容してしまう、というのもどうなのかなあ……シリーズを続けるための伏線?電撃大賞への原稿応募時点でラストが既にこの状態だったのか、気になります。