キーリ 死者たちは荒野に眠る/壁井ユカコ/電撃文庫

キーリ―死者たちは荒野に眠る (電撃文庫)


文章力は(あくまで)今まで読んだラノベの中でもかなり高いように感じられました。設定もそれほど特異なものではないけど、電撃というと時代としては現代、もしくは近未来の伝奇、能力バトルが活発なイメージがあったので、こういう和製ファンタジーの雰囲気を持つ作品が出てきて嬉しく思います。「大賞」だけあって全体的に完成度も高いかと。


ただ、完成度が高いとそれだけはっちゃけが足りなくなっちゃうのかなあ……なんだかどこで盛り上がっていいのか分からないようにも思いました。短編形式で綴る旅先の出来事も個々の話としては悪くないし話に必要ではあるんだろうけど、その分主要キャラ3人への感情移入は薄れ気味。兵長が逝く時のキーリの台詞にもなんでそこまで執着するのか、と思ってしまったり。中盤で出てきたあの人も出番は少ない上あっさりやられるし。そういやあの人がどうしてキーリに執着するのかもいまいちよく分からなかったなあ……。


で、尚悪いことにこの話まだ続くんですよね……現在4巻目だっけ。続刊読んでないからなんとも言えないけど、ここで終わってた方がスッキリしたと思うんだけどなあ。もしくは1巻の話を3巻ぐらいかけてやるとか。大賞取った作品が個性的で面白かったのに、それはそこで終わってしまい編集部の意に添った新シリーズを書かされて個性が消える、ってのを富士見で延々と見てる身としては大賞取った作品の続刊をすぐに刊行できるってのは電撃のいい点ではあるんだけど、それが裏目に出ることもあるのかもしんないね。


ってこれ、既にラジオドラマ化されてるのか。さすが電撃は展開早い。……ってキーリ:中原麻衣!?うそーん。表紙だけ見てキーリを好みの不思議少女だと思ってた俺の期待を返せ!