耳刈ネルリシリーズ/石川博品/ファミ通文庫

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)


完結から1年。既にネット上では熱心なファンの人たちがこれでもかと愛を叫んでいるので、今さら自分が語ることもないかなあと思っていたのだけど、このラノでの結果に納得いかなかったのでこのシリーズについて何か書いておかないのも怠慢だと思ったので書く。「耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳」「耳刈ネルリと奪われた七人の花婿」「耳刈ネルリと十一人の一年十一組」の全3巻。1巻目は第10回えんため大賞優秀賞受賞作。


今も昔も、ラノベが「面白ければ何でもあり」だった時代なんてなかった。「面白さ」の基準をどこに置くにせよ、その時代その時代に何らかの制約があったはずで、そもそも出版すらされない作品もあっただろうし、大勢が面白いと言っているのに売れずに打ち切りなんて作品はいくらでも挙げられる。……そんな自分に「面白ければ何でもあり」という理想をいま一度抱かせてくれたのがこのシリーズだった。


実際のロシアの歴史に取材したと思われる緻密な世界設定を作り上げておきながら、大量のネットスラングとパロディネタを無造作に(と自分には思えた)ぶち込むところが大好き。ネットスラングやパロディネタを(不自然を感じさせることなく)自在に駆使する、ぼくらの時代の主人公。ここぞという時の叙情的な情景描写。青春小説としての完成度。かくありたい。