HURTLESS HURTFUL/清水マリコ/MF文庫J

Hurtless/hurtful (MF文庫 J し 2-7)


兄が駅のホームで線路に転落した女性を助け、意識不明の身となった。それをマスコミが美談として取り上げ、周囲がやたら騒がしくなった。戸惑い、やり場のないうざったさを感じる主人公の前に、「兄の心から脱獄してきた」という美少女が現れる……。清水マリコMF文庫Jでは3年ぶりの新作。


本気を出した時の清水マリコが描く女の子は、可愛い。何か特筆すべきものがあるわけじゃないのに、無性に惹かれる。そう思う人にこそ、この物語は突き刺さる。無骨な鉄で出来た工業地帯に佇む、柔らかくて、砂糖菓子みたいな女の子。華奢な肢体とは不釣合いに成長した胸。綺麗なものへの憧れと、それに相反する醜悪な欲望。「男らしい」こととは。……この感想(ネタバレ含む)を読んだためかもしれないけれど、嘘三部作の時は曖昧模糊として掴みどころがないままだった(それが持ち味でもあったわけだけど)イメージが、それなりに確固とした形をとって伝わってきた、気がする。且つ、あの独特の空気も失っていなくて、よござんした。