晩年/太宰治/新潮文庫

晩年 (新潮文庫)

彼らの議論は、お互いの思想を交換するよりは、その場の調子を居心地よくととのうるためになされる。なにひとつ真実を言わぬ。けれども、しばらく聞いているうちに、思わぬ拾いものをすることがある。彼らの気取った言葉のなかに、ときどきびっくりするほど素直なひびきの感ぜられることがある。不用意にもらす言葉こそ、ほんとうらしいものをふくんでいるのだ。

なにか気まずい思いをしたときに、それを避ける法を知らずがむしゃらにその気まずさを徹底させてしまわなければかわなぬ悲しい修正を葉蔵はもっていた。

タイトルとは逆に太宰の処女作品集。遺作となるだろうと思いこういうタイトルをつけたらしい。オナニーのことは「あんま」と表記するらしいとか、飼っていた兎を交尾させて興奮したとか、作文が褒められたことで有頂天になって黒歴史長編小説を書くけど袋叩きにされたりとか。