十二国記 華胥の幽夢/小野不由美/講談社X文庫ホワイトハート

華胥の幽夢 十二国記 (講談社X文庫)


十二国記』最終巻はなんと短編集でしたというオチ。……最後の短編が、あの世界全体を俯瞰するような話になってるだけに、ここで打ち切り、と言われてもわりと信じられそう。


冬栄:泰麒が漣にお使いに行く話。廉王と廉麟のカップルに惹かれました。ことによると今まで出てきた王と麒麟の中で一番好きかもしんない。


乗月:王不在の芳で、良かれと思い王を討った月渓たちが自分たちの行いの是非について悩む。この巻は他もそんな感じだけど、特に劇的な展開もなく、会話劇中心で話が進む。『風の万里、黎明の空』はあんまり好きではなかったのだけど、この巻で当事者の人たちの胸中が描かれていて、溜飲を下げた。


書簡:タイトル通り、萌え鼠と陽子の(少々ファンタジーな方法での)書簡のやり取り。身に染みる。


華胥:愛憎が絡み合う才国王家殺人事件。その犯人はなんと。……展開がミステリっぽくはあるけど(ひょっとして『メフィスト』に掲載されたから?)、どっちかというと誰が犯人とも知れない疑心暗鬼とか、そういうのがメイン。自分はてっきり、訳知り顔でぺらぺら喋るあの男が犯人かと思ったんですけどねー。主人公がやけにその男の発言を鵜呑みにするもんだから。……しかし、ますます世界を統べる神様に不信が募りそうな話だ。多分、そういう理不尽さは狙ってやってんだろうけどさ。


帰山:今までのお話が王が唯一無二であることの孤独とを描いてきてるので、こういうまとめられ方をすると合議制最強、という風にしか取れないなあ。あれだけ結果を出してるなら、他の国がやり方を真似てもよさそうだけど。まあでも、血縁による合議制っていかにも危なっかしそうだし、奏は奇跡的にうまくいった例、ってことなのかしらん。


……しかし、時系列があっちこっちに飛ぶシリーズだったなあ