電撃文庫の絵師採用における傾向
電撃文庫が、他のレーベルと一線を画している点の一つに、売れたシリーズの作家と絵師のコンビは、結構な高確率で次のシリーズでもバッテリーを組むということがあります。「ブギ−ポップ」の上遠野浩平と緒方剛志。「キノの旅」の時雨沢恵一と黒星紅白。「イリヤの空、UFOの夏」の秋山瑞人と駒都え〜じ、「都市」の川上稔とさとやす、「月と貴女に花束を」の志村一矢と椎名優、最近だと「わたしたちの田村くん」の竹宮ゆゆことヤスなどが思い浮かびます。
これの利点は、読者が慣れ親しんだ、「この作家と言えばこの絵師!」というイメージを崩さないでいられること。昔、神坂一が「スレイヤーズ」の文章だけでなくイラストも書いていると思われていた、なんて話を聞いたこともありますが、それだけ両者は同一視されることも多いのでしょう。新シリーズで新しいコンビが結成され、そのイメージが覆された時の反発は、感想BLOG等を巡っていても、それなりに目にします。出版社としてはそれを回避し、「あの○○のコンビが再び手を組んだ!」みたいな煽り方ができるのは、儲けものかもしれません。富士見やスニーカーが何故この方式をあまり採用しないのか、不思議なくらいです。神坂一とあらいずみるいも、秋田禎信と草河遊也も、アレだけ売れたのに、次のシリーズではコンビを組まなかった。
が、当然マイナス面もあって。それは、まあある程度予想がつくと思うんですが、ビジュアルイメージが前作に引きずられる、ということ。だからといって作品の面白さが損なわれるかと言えばそうでもないし、当然絵師さんもそこら辺は気をつけると思うんですが、大体そういうコンビって前シリーズが長く続いてたりして、あんまり新鮮味がないんですよね。だから、新シリーズを読むというワクワク感があまりしない。だったら、新シリーズ開始直後は「前の絵師の方が合ってたなあ……」と多少抵抗があるとしても、個人的には別の絵師を選んでほしいというのが、正直なところ。せっかく作家とイラストレーターが別々にいるんだから、できるだけ色んな出会いをさせた方がいいと思います。まあ、電撃も3作目、4作目とずーっと同じコンビでやらせようとは思ってないでしょうが。とりあえず、高橋弥七郎の新シリーズの絵師がどうなるのかはちょっと気になります。
……んー、でもあれか、これは文を書く人に焦点を向けた時の話で、絵師の方を見てみると別の人と組んだところでヒットした前シリーズのイメージと言うのはどうやっても残らざるをえないのかな、とか。いまだに「BBB」のファンの人でイラストがオーフェンっぽいオーフェンっぽい言ってる人いるし。結局、ライトノベルにおいては文を書く人だけ新しいものを目指そうとしても駄目、絵を書く人だけ新しいものを目指しても駄目、ということなのか。