ひとつ火の粉の雪の中/秋田禎信/富士見ファンタジア文庫

ひとつ火の粉の雪の中 (富士見ファンタジア文庫)


最強の鬼斬り・鳳は、夜闇という少女を拾う。彼女は、最強の力を秘めた鬼の子だった。鳳は彼女を連れて、長い長い旅に出る……。第3回ファンタジア長編小説大賞準入選作。


作者が17歳の頃に書かれた、秋田禎信のデビュー作。何度も読んだけれど、いまだに自分の中で消化し切れていない作品です。


この作品の魅力を語ることは、そう難しいことではありません。押韻や語呂合わせを多用することで独特のリズムを得た文章と、日本神話的な世界観。それらが生み出す、幻想的な雰囲気。とか、そういうお定まりの触れ込みなら、いくらでも思い浮かびます。


テーマ自体もそう難解なものではなく、いたって単純です。誰も彼もが、誰かを恨まずにいられないような過酷な世界で、生きるとはどういうことかを問う。羞恥心を捨てて言うなら、そういうことです。それに対する解答も、オーフェン2部やシャンク!!などの結末のように驚くようなこともない、普遍的なものです。


ではどこが消化しきれないのかというと、何がどうなってそうなるのか単純に分らないシーンが幾つもあるんですよ。具体的に挙げるなら、鳳が敵の結界に閉じ込められてしまうんだけど、そこを脱出するためには謎かけのようなものを解かないといけないというシーン。ここが一番分からない。字面だけ追っていけば意味は伝わっているんですが、思考の飛び方が尋常じゃないというか。また、先ほど述べた押韻や語呂合わせも、単なる言葉遊びのようにも見えるし、深読みしようと思えばどこまででも深読みできそうな気がする。自分が何を分かっていないのかすら分からない。オーフェン第2部以降のように、ごちゃごちゃしてて複雑、というわけでもない。そういう点が厄介なんです。


作者の(当時の)年齢を考えれば、荒削りで、人に物事を伝える能力が欠けている、という批判が妥当かもしれません。実際、作者も抽象的なこの話を反省したのか、次作ではやたら視覚的な描写を増やしています。しかし、日本語が下手ということは決してないし、どのシーンも作者は明らかに何らかの明確な意図を込めて書いている(ノってる時の作家ってそんなもんだという気もしますが)。じゃあ、悪いのは理解できない自分の方ではないか。テーマは単純と言ったけど、実は自分は全然理解していないんではないか……そんな気にさせられてしまうんです。これはもう信者とか関係大アリで。

感想リンク

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4829124539/subesubemannz-22/ref=nosim
http://book.g.hatena.ne.jp/happy_days/20050812/p2
http://d.hatena.ne.jp/leo_d/20050421#RA


一番下、id:leo_dさんの萌え挿絵で復刊希望に賛同ー。言われてみれば確かに泣きゲーくさいですね。おっさん×ょぅι゛ょという組み合わせもその筋の人にはとてもキャッチー。