円環少女(1) バベル再臨/長谷敏司/角川スニーカー文庫

円環少女 (角川スニーカー文庫)


ぎゅっと濃縮されてるものを読んで、お腹一杯です。げっぷが出ました。キーワードは、サドデレ少女と理論型魔法バトル。


普通の人間に見られると魔法が消されてしまうことから、他の世界に住む魔導師から<地獄>と呼ばれている地球。罰としてその<地獄>に堕とされた少女・鴉木メイゼルは、専任係官武原仁と共に犯罪を犯す魔導師を狩ることになる。


デビュー作に比べると、えらく派手でキャッチーなものを書いてきたなあと。特に目を引くのは独自の理論でもって体系づけられた魔法の設定。榊一郎や、私は未読ですけど三枝零一なんかがやってる魔法をプログラミングになぞらえたり、科学と融合させたり、そういった系統に近いものを感じます。これでもか、これでもかと設定を詰め込んでくるその姿勢は、私も設定マニアなんで基本的には楽しめましたけど、ちょっとついていけないところもあったかな。こういう言葉は使いたくないんだけど、厨臭い、というか。それと、設定自体は面白いんだけど、いざ戦闘となると普通の能力バトルと大差なくなっちゃうところもややマイナス。


キャラクターは、逆に感情移入できるぎりぎりのところまで描写を削ってるのかな。多分、ザ・スニーカーの方で既にヒロイン・メイゼルと仁の出会いを描いた話をやっちゃってるというのもあるんだろうけど。心情の変化が唐突過ぎるだろ、というところがちらほら。ヒロイン・メイゼルにしても、「この子はこういう性格だ」ってキャラづけばかり先行してて、肉付けがなされてないかも。というか、単純にもっとメイゼルを暴れさせて下さい。ま、この点に関してはシリーズを重ねていく中でおいおい改善されていく……といいなあ。


文章も、デビュー作とは大分趣を変えています。多分、どっちも読み辛いと感じる人は一定数以上いると思うんだけど、読み辛さの質が違う感じ。デビュー作「楽園」は削れるところはギリギリまで削って、段落ごとにぶつ切りになってる辺りにテンポの悪さを感じてしまったんですけど、今回は逆に一文一文がやや装飾過剰かも。ただ、後者に関しては私は気に入ったんで、このままいってくれちゃうことを望みます。


色々文句も言ったけど、濃密なものを読んで満足してます。個人的な好みを言えば直球ど真ん中なんで、次も期待。