銃と魔法/川崎康弘/富士見ファンタジア文庫

銃と魔法 (富士見ファンタジア文庫)


第5回ファンタジア長編小説大賞準入選。エルフやドワーフ、ゴブリンなどといった亜人間種、そして人間が一つの社会で共存している世界。麻薬撲滅、ストリートギャングや売春婦の摘発などといった事件を様々な人種の主人公達が追う、ドタバタポリスアクション。


富士見お得意のハイブリッドファンタジー……と言っていいのかどうか。榊一郎みたいにファンタジーにSF要素を加味するってんならそれでいいだろうけど、この作品の場合まず土台としてポリスアクションがあってその中にファンタジーを絡ませてるって感じだから、なんか違う気もする。特に根幹のテーマとかに関わってくるわけでもなし。人間亜人間に発生する人種差別(エルフは寿命が長いので何十年働いても長期勤務手当てがつかない、とか)とかテーマにしたら面白そうなのに、そこらへんを全部背景にしちゃう辺りはあえてそうしたんだろうな。それはまあいいんだけど、キャラクターがいまいち書き分けられてないのが辛かった。よく言えば記号的に書いてないってことなんだろうけど、キャラほとんど全員同じテンションで台詞回しにもそれほど特徴がないので、最後まで名前を覚えられないキャラもいたのは大塚英志曰く「キャラクター小説」として致命的な気はする。


文章は、地の文が同作者の「双角小隊」「Alice」以上に突き放してて、乾いてる感じ。ひどくローテンションなコメディ。つーかこれ読んだ後だと、「Alice」のテンションの高さが異常にすら思える。多分、ここらへんで好き嫌いが出てくるんだろうなー。私には、「双角小隊」ぐらいのテンションが一番合ってました。