ちーちゃんは悠久の向こう/日日日/新風舎文庫

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)


新人賞を4つも5つも獲ってあまつさえ作品が被ってるから辞退したものもある、と言い出したりと作品が出る前から話題沸騰の新人作家のデビュー作。結局、近所では見つからなかったので人に借りることに。感謝してます。


えーと既に各所の感想で言われてますが、文章が巧いです。ファウスト系とか(あそこら辺でちゃんと読んだのって西尾くらいだけど)そこら辺のラノベっぽさを残しつつ、適度に抑制が効いてて落ち着いてる文章。文章力というと簡潔な文章で適切に物事を伝える能力のことか、ともすると悪文ともとられかねないけど好きな人は凄い好きな文章を書く能力か(秋山瑞人みたいな)、たまにラノベ板でも議論になるんですけど、これに関してはまあ普通に巧いって言うんだろうなあ。基本的には、特にちーちゃんの台詞回しにラノベというか、会話でキャラクターを立たせるキャラクター小説らしさを感じました。


お話の方に目を向けてみると、100Pくらいまでの導入部で期待が高まって、中盤でちょっと何がやりたいのか分からなくなって、最後にああ、そういうとこに落ち着くのかーと。ちょっと明確なテーマというか何をやりたいのかがよく分からないところはあった。多分、それを評して解説の久美沙織は「平凡な設定から、予測不能な方向に話が転がり続ける」と言ったんだろうけど……私が感じたことはもうちょっと違くて、予測可能な展開ではあるんだけど、どういう順序で、どういう過程でそこに行くのかが分からない……みたいな。何が言いたいのか分からないのはこの文章ですね、すいません。


あと思ったのは、とにかく考えが若いこと。私もまだ22年生きただけなんで、迂闊にこういうこと言っちゃ駄目なんでしょうけど。特に体育会系に関してはなんか恨みでもあるのかと思った。これは、語り手である高校生の主人公がそういう人だから、わざとやってるんじゃないかと思ったけど、あとがき見てる限り、素でそういうことを思ってそうではあるんだよなあ……。そこらへんが今後の作品でどう出てくるか。


この人に関しては、ラノベレーベルで書いた別の作品を読んでみたいなあ、ってのが結論。それと、久美沙織の解説はなんかずれてるなあ、と思った。