世界の中心で、愛をさけぶ/片山恭一/小学館

世界の中心で、愛をさけぶ


某アニメの26話でもなければその元ネタのSF小説でもない奴。
「涙がとまりませんでした」みたいな煽り、大仰なタイトル、表紙と内容が乖離さえしてなければネットでここまでぼこぼこ叩かれることはなかったんじゃないか、と思った。どちらかというと淡々と読み進めるタイプの作品じゃないのかなあ。情景が思い浮かぶような綺麗な(映像化すれば映えそうな)表現は幾つもあるけど、個人的にどうにも感情移入できなかったのでイマイチ盛り上がりに欠ける。
よくオタク文脈で言われる、これやるなら「加奈」とか泣きゲをやった方が余程泣ける、ということについては少々同意してしまったあたり、俺もそろそろやばいかなあ。ただまあ「加奈」の方があざといというかさあ泣け!と言わんばかりな作りが少々鼻についたのに対してこっちはあくまで淡々と話が進んでいく(見せ場がない、と言えなくもない)ので、これは好みの問題もあるかもしれない。というかアニメ絵の女の子が主人公な時点でどうやったってオタには感情移入の一因になっちゃうわけだから、オタによる2作品の比較はフェアじゃないかもね。「加奈」の絵は正直あんまし好きじゃないけど。それと、文章的にも「加奈」よりこっちのが上だと思います。中学生並みの文章と酷評されてはいるけど。

「加奈」と言えばX-BOX版はどうなったのかと思って公式http://www.panther.co.jp/kana/index.htm行ったら以前沈黙が続いてた。閑話休題

で、はたしてこの作品はセカイ系であるのか?どうなんだろうね。序盤からそんな匂いはぷんぷんするんだけど、なんか成り損ねた感じ。エヴァから始まる一連のセカイ系と言われてる作品が軒並みSF的なガジェットというか匂いを漂わせてたのにこの作品にはそれがないからか。よく分かんない。どうでもいいや。
余談。amazonのカスタマーレビューhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4093860726/customer-reviews/ref=cm_cr_dp_2_1/250-9323975-5177845が779件も行っててビックリ。みんな同じようなこと言っててゲンナリ。肯定派の意見が「理屈じゃない、感じるんだ」「この感動が分からない人は本当の恋愛をしたことがない、感受性がない」の一点張りなのがなあ……「本当の恋愛をしたことがないからこの作品の大事な人を失う悲しみが分からない」ってのが真実なら、ネット=恋愛経験が薄いオタの声が強い場所で否定的な意見が多いってのも納得できるんだけど、そうすると「はあ、じゃあしょうがないですね」で終わっちゃうわけで。まあこの作品をオタが否定してるってのは単にオタが世間で流行ってるものに懐疑的なだけ、ってのもやっぱり強いんだろうな。