瑠璃の方船/夢枕獏/文春文庫

瑠璃の方船 (文春文庫)


偶然にも『獣たちの夜』と同じく、1960年代末〜1970年代の日本を舞台にした、自伝的要素が混じった青春小説。夢枕獏押井守と同じ1951年生まれなのね。山田正紀に衝撃を受けた点も一緒らしい。自ら学生闘争に参加したあちらの主人公とは違い、こちらは賛否を示さない消極的な立場だったが、それ故、ではお前のやりたいことはなんだ?と問われてゆく。


今まで読んできた夢枕獏の作品の多くは、主人公が子どもでも大人でも老人でも、伝奇でも格闘物でも、大抵はナルシズムに溢れていて、青春小説していたのだけど、これはその極みみたいなところがあった。そういう作品でもイラつかずに読めるのは、そのナルシズムがいい意味で俗っぽいというか、素朴?だからかなあ。好きってことさ、と言ってもいいけど。