夏子の冒険/三島由紀夫/角川文庫

夏子の冒険 (角川文庫)


主人公・夏子は裕福な家庭に育ち、周囲にはいつも男たちが群がっていた。が、彼らの誰ひとりとして自分を満足させてくれる情熱を持ち合わせておらず、とても退屈だと感じていたため、函館の修道院に入ると言い出す。そこに至る旅の途中で夏子は、熊を相手に仇討を誓った青年・毅に出会う。


三島センセの少女小説のひとつ。終始ノリのいい作品で面白かった。夏子を始め、「良家の夫人」を茶化したような、彼女の母や祖母の我侭で自分勝手で騒々しくて人の話を聞かない、でも変なところで面子を気にする性格、それに振り回される男たち、毅を慕う野性的な美少女・不二子といった面子は、キャラが立っていて、氷室冴子の作品を読んでいるみたいだった。


解説で夏子と不二子のの関係をエウレカセブンエウレカアネモネ、あるいはエヴァ綾波とアスカに喩え出した時はどうしようかと思ったけど、そういう層を当て込んで復刊されたのかしら。角川だしないとは言えないのが恐ろしい。


しばらくは三島センセの軽いものを見繕って読んでいくことにする。